【第5回:守岡実里子さんコラム】関西と関東は出汁が違う!全国のお出汁の地域性とは?

関西と関東は出汁が違う!全国のお出汁の地域性とは?

南北に長く土地ごとに地域性の異なる食文化を持つ日本では、お味噌汁やお雑煮一つ見ても出汁や調味料、具材が異なり、地域によって様々です。
出汁には日本全国で地域ごとに使われている素材があり鰹節や昆布の他に、いわし節、さば節、むろあじ節、まぐろ節、煮干し、干し椎茸などがあります。

関西と関東の出汁の違い

日本で出汁が生まれたのは奈良時代と言われ、昆布や鰹などが文献に残されています。
鰹は『古事記や『延喜式』に記された「堅魚」と呼ぶ固く干した魚が鰹節のルーツと考えられています。
関西では古くから昆布が朝廷の献上品として扱われていた歴史があり、昆布だしが主流でした。
もともとは関西が食文化の中心だったのが、江戸幕府の時代から江戸の食文化が広まり、2つの食文化の地域性が生まれました。
関東には昆布を運んでいた航路の関係で昆布がほとんど入って来なかった為に昆布の文化は広まらず、江戸時代に入ると鰹節の製法が一気に発展したこともあり、江戸で鰹節が広まりました。
カビ付けを行う「本枯節」が生まれたのも江戸時代のこと。
それぞれの歴史的背景もあり今でも関西は昆布出汁の文化、関東は鰹出汁の文化と言われています。

本枯節と荒節

関東と関西では、鰹節の選び方も違いがあります。
江戸時代の中期を過ぎると、江戸ではカツオ節にかび付けをした本枯節が最高級品として好まれるようになりました。
本枯節はカビ付けを繰り返すことによってタンパク質が分解され、うま味と上品な香りが特徴で酸味が少なくまろやかな味わいとなっています。
一方、関西ではかび付けをしない、荒節が好まれる傾向にありました。
こちらは焙煎の香りが残ったさっぱりとした香りとほのかに酸味を感じるのが特徴です。
同じカツオ節でも東西で違いがあり、東西で出汁の味が違うと言われる理由のひとつだと考えられています。

出汁が変わると味付けも変わる?

関東は味付けが濃いめで関西は味付けが薄め、とよく言われますが、鰹出汁に比べて昆布出汁は味が繊細で薄めです。
鰹出汁が普及した江戸では濃口醤油や味醂が普及した為に、色も濃くこってりとした甘辛い味が好まれました。
京都や関西では昆布出汁に薄口醤油を合わせるのが主流なので色も薄くさっぱりした味が好まれました。
こうして出汁の違いで料理の味わいにもだいぶ違いが生まれました。

全国の出汁にも地域性がある!

関東と関西だけではなく出汁は全国的にも様々なものが使われています。
鰹節以外にも様々な節があり、地域ごとに使用されている個性豊かな味わいがあります。

(むろあじ節)

むろあじを原料とした節。九州が産地ですが中部地方のうどん店で使われることが多く、関東では珍しい節です。味はさば節よりもさっぱりしています。

(さば節)

主にゴマサバを原料とした節。東京より南の海、九州で水揚げされたものが使われます。あじと同様に、出汁の味にコクを出すときによく使われます。

(いわし節)

カタクチイワシを原料とするのが一般的ですが、ウルメイワシ、マイワシから作ることもあります。主に関西で使用され、うどん、煮物、味噌汁など幅広く使われています。甘みのある出汁がとれます。

(宗田節)

ソウダガツオを原料とした節。濃厚な出汁が出るため、中部、関東地方で鰹節やさば節と混合して使われます。

全国のそばやうどんに使われる出汁を見て行くと、北海道でよく使われるのはかつお、昆布、煮干し東北・北陸は煮干が中心。
九州にかけては椎茸や煮干が多くなりますが、福岡・長崎ではアゴがよく使われています。むろあじ節は九州が産地ですが、愛知でもよく使われます。
全国各地に存在する出汁の種類は実に様々で、地域ごとに違った料理の味付けを楽しめるのも、日本の和食の魅力的なところではないかと思います。